まんじゅう怖い

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まんじゅう怖い

 蓮雀詩乃16才落語家弟子見習い。落語家の家系に生まれ父親に弟子入りしようとしたら、なんか照れくさいから嫌だと言われ、おじいちゃんに弟子見習いとして通っている。  白楽亭桜の名前で近所のカフェで披露している。今日はカフェで一席やるために打ち合わせに来ている。詩乃はクリームソーダを飲みながら店主を待っている。そんな時にふと思い出す。   「伝統を守り繋ぐために一心不乱に努めたいと思います」 「何の伝統」  おじいちゃんが詩乃に聞く。 「それを私に伝えるのが仕事でしょう」 「そんなもんないよ。ハンバーグやら携帯が出てくる世界に何が伝統だ。あるのは意地だ。笑わせてやるという意地だ。それだけはなくさないでくれ。がんばりなさいな弟子見習い」  おじいちゃんはニカアと笑った。ただ弟子見習いってなんだろうなと詩乃は考える。    演目はまんじゅう怖いにした。お店にふれよう古典落語会と書いた手書きのポスターを張る。シュークリームをもらい、帰りに神社によると拝殿で白い猫が寝ている。猫は詩乃に気づき。 「失敗が怖いかい?」  猫が話しかけてくる。詩乃が固まる。猫が大きく欠伸をする。 「わしはシュークリームが怖い」  猫はそう言うとまた欠伸をした。しのは驚き鞄に入ったシュークリームを触る。 「シュークリームが怖い」  猫が繰り返す。 「シュークリームは毒だろう?」 「化け猫だから平気だ。半分よこせシェアだ」  これはカツアゲの方が近いと思った。シュークリームをあげると食べる。 「本当に怖いのはなんなんだい?」  詩乃が聞く。 「ベッドが怖い」  どうしようかな。可愛いけど。猫は鞄に入ろうとしている。とりあえず拝殿にいるので二礼二拍手一礼をして成功を願う。 「何願ったの詩乃?」 「君がいい子になるようにと願ったよ」  名前を知られているのか、化け猫かなと詩乃は考える。猫は欠伸して鞄の中に入っていく。神社だから招き猫だったりするのだろうか。 「売るとか考えるなよ」  鞄から声がする。詩乃は鞄を持ち上げる。 「重たいな」 「これは命と責任の重さだ、名はハクだよろしく」  詩乃はぶつぶつ言いながら家に帰った。ハクは人気者になった。 「ハク、セーラー服と浴衣どちらを着てる方が受けがいいかな?」  ハクは一瞥して丸くなる。 「練習しろ」 「正論…」  当日が来た。聞いてやると言うのでハクは鞄に入る る、詩乃は悩んだが浴衣を着てカフェに向かった。カフェに入ると鞄をすみに置き、用意された小さいステージのような場所に向かう。 「しっかり客を見て、笑顔で笑わせる。絶対に意地でも笑わせてやる」  詩乃はつぶやいた。  私白楽亭桜と申します。まぁお名前と可愛い子だなって覚えて下さればけっこうでございます。  えぇ夏は怖い話が流行りますな。怖い話だから何が怖いってのが大事ですね、最近は白いワンピースが流行りですかね。白いワンピースは怖いですね、カレー蕎麦などあぁ怖い。コロッケカレー蕎麦とかなんか凄くて怖い。食べるとコロッケがカレー味だったりする。コロッケはロシアンルーレット的な怖さがありますな。生卵にかき揚げ追加?もう何が何やら分からなくて怖い。まぁ優しさや監督の笑顔が怖いなど、ものは様々でございます。  しのは噺に入る。 「いやぁぁ、来る途中蛇を見ちまった。蛇はぞっとするなあまりにも蛇が苦手だから縄も苦手になってしまった。」 「俺は蟻がこわい。集団が怖いな、細かいのがぞぞろと動いているだけで嫌になる」 「俺は母ちゃんが怖い。優しい時が一番怖いな」  そんな会話をしていますと。 「くだらないねえ」  「おめえさんにも怖いものがあるだろう辰よぉ」 「ないねえ、蛇に蟻、お前の母ちゃんやら何も怖くないね、蛇は暑い日には首に巻くと気持ちがいい。蟻はゴマみたいなもんだから赤飯にピッタリだから縁起がいいってもんだ。お前の母ちゃんはあれだ。あれだ」 「あれってなんだよ辰よぉ。いいや何かあるはずだ」 「言いふらさない?」 「ろんもち」 「信用出来ない」 「辰言え!」 「実はまんじゅうが怖い」 「何味だ?」 「へ?」 「何味が怖いんだ辰」 「チョコブラウニー味とバナナケーキ味が怖い」 「それは怖いな」  賛同されちゃった。それから辰が寝ているとエイヤエイヤとまんじゅうが投げ込まれます。その数百を超える。 「意外と当たると痛い。ってなんて数だ。うん、チョコブラウニーとバナナケーキだ。本当に用意したよ…もしかして、このまんじゅう作ったのか?」  辰がまんじゅうを食べていきます。それを見て。 「やいやい辰騙したな。おめえさんの怖いのはなんなんだい?」 「うーん抹茶ラテが怖い」 「タピオカは?それとも追加トッピングで漢方系のゼリーかい?辰よお何が怖い?」 「終わらねえよ。何も考えないお前が怖い」  詩乃が頭を下げる。詩乃は千円手に入れた。お金は桜ちゃん育成ファウンディングと書かれた籠に入れてもらう形にした。 「有難うございました」  詩乃はシュークリームを貰いカフェを出る。 「どうだった」 「寝てた」  神社に行きハクとシュークリームを食べる。シュークリームを食べながら、なんかカフェで落語やると太るんじゃないかと詩乃は思った。カフェが問題じゃなくて貰うのが問題なのだが。 「シュークリーム怖い」
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