劫火

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 これは聖戦である。子供たちよ、自らの力を示せ。家族を、友を、大切な人を守るために立ち上がれ。 「何をやってもダメな私でも、皆を守れるなら参加するよ。おじいちゃん、泣かないで。大丈夫よ」 「心配しないで母さん。私、絶対帰ってくる。兵士になるわけじゃない、医療従事者として皆を助けに行くだけだから」 「何が聖戦? そんなのに全然興味ないんだけどでもまぁ、すげえいい稼ぎにはなるからな」 「結局この戦争が終わらないと安心して暮らすことができない。親父、弟たちを頼む。こいつらが戦争に参加しなくてもいいように、俺の代でカタをつけないと」 「食べ物がなくて困ってるって言うから。料理人として行くだけだから。おいしいもの食べた時は一番幸せだと思うんだ。そのお手伝いができれば」 「でも、なんで子供だけなんだろう。どうして大人はだめなんだろうね」 「大人はもう戦争に参加してるからじゃない?」  理由は様々、全員が兵士志願という訳ではない。だが結局集められた子供らは全て戦う者として扱われることを彼らはまだ知らない。  配られた赤、青、黄色、緑の薬のカプセル。幼い子供が食べるお菓子の色のようにあまりにも毒々しいそれは、飲めと言われてもためらってしまう。 「十八歳以下の子供たちは能力開花が最も活発だということがわかっています。神より与えられしその力、今こそ解き放つのです」  与えられた薬はそれぞれ意味がある。赤は炎、青は水、黄色は雷、緑は癒し。それらの特殊な能力を開花させ、戦う力として使うことができる。 「すべて飲み干して、どんな能力が開花するのか自分で確認してください。能力が目覚めた者から、聖戦へ」  守るため、金の為、終わらせる為、多くの理由で集まった子供たち。薬を飲む、以外の選択肢は許されない状態だということは、能力を開花させた年上の兵士たちに囲まれた中では容易に理解できた。飲まなければ、この場で炭にするだけだ、と。  炎の能力者たちが集められているからだ。それは先程帰ると泣き喚いた者が骨まで焼かれる様を見せつけられてよくわかった。 「さあ、あなた達はどんな素晴らしい兵士になってくれるのでしょう?」  偉大な御方に見えた男は、今は悪魔に見えた。震えながら薬を飲み干す子供たちは、わずか二日で戦場へと放り出されることとなる。
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