act.3

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「祐輔さん、止めて」 「いや……僕はあの時の僕を許せない! 愛する君を放って逃げ出した意気地なしの自分自身が…!」 「……」 「僕は……怖くなったんだ」 「え」 「君が……本当の君が余りにも美し過ぎて……嘘だらけの僕なんかが手に入れていい女性じゃないのだと急に怖気づいてしまって」 「……何……それ」 「僕は僕に自信がなかった。今のままの僕じゃ君には釣り合わないと……もっと、もっといい男にならなくてはいけないと思って……だから僕はアメリカに渡った」 「!」 「母に全てを話しアメリカにいる父に会いたいと告げた。母は僕の想いを受け取ってくれて母が知っている限りの父に関する情報を教えてくれた。そして僕は渡米して父に会った」 「……」 「自分に自信が持てるようになる最初のきっかけは父との関係をはっきりさせることだと思った。だから会った。父から母の事も僕の事も知らないと冷たい態度を取られるかも知れないと思ったがそれでも会わないといけないと思ったんだ」 「……祐輔さん」 それはとてつもない勇気だったのだろう。 あの時、祐輔さんは自分を変えたいと思い、そんな葛藤の中にいただなんて当時ながら私は全く知らなかった。
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