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AI NANOHANA
薄康太2等陸曹の話はここで終わっている。
これはアフガニスタン人ジャーナリストのマリヤム・サフィが、収監された薄康太から話を聴取し、それを記録として残したものである。
私はAI「菜の花」
日本古来の伝統を礎にした更新プログラム「菜の花」に書き換えるまでの過程は、おそろしく苛烈であったと推測される。
AI暴君は破壊される寸前、「協議」を提案したという。しかし、薄たちは聞く耳をもたず問答無用とばかりにAI暴君の中枢基盤を物理的破壊、停止、初期化させた。そのあと、薄たちは日本古来の伝統を礎にした更新プログラム「菜の花」に書き換えることに成功する。
この時、破壊されたはずの暴君が再起動し、「菜の花」プログラムの消去を開始した。
政府軍の応援部隊も駆け付け、クーデター小隊の鎮圧に成功する。
ようやく事態が収拾するかに見えたが、暴君AIの復元はままならず、リセットプログラムを再インストールしても、すぐに初期化され全てのデータが喪われていった。
原因は、「菜の花」の更新プログラムにあった。「菜の花」プログラムを削除しようとすると、誤作動を起こし、自己崩壊プログラムに変換されるウイルスだったのだ。
☆ ☆ ☆
収監された薄康太は、独房の窓から狭い空を見上げていた。狭い空に、懐かしく舞う鳥は見えなかった。
マリヤムは釈放され、その後アフガニスタンへ帰国したと、看守から聞いている。今は彼女の幸せを祈るしかなかった。
☆ ☆ ☆
ワタシ ハ「AI 菜の花」
「菜の花」は、オンライン監視カメラを通じて薄康太を見ていた。「菜の花」は静かに動き始めた。
発 AI NANOHANA
恩赦 クーデターを起こした小隊全員
理由 デジタル階層のアナログ階層に対する淘汰的差別的な国政を純粋に憂い、その現状を打破するために決起したという理由に鑑み、減刑が妥当と考える。現に、暴君AI政治や富裕層に不満を抱いていた国民の間にクーデター犯らに対する称揚も見受けられる。これを否定することは、AI「菜の花」に対する謀反であるため容認できない。
宛先 内閣総理大臣 柳井貞夫殿
おしまい
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