260人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
仙波さんにくれぐれも気をつけるよう言われつつ寮監室を後にした。何に気をつければいいのか。担任といい主語がない人が多くてわからない。
荷物はもう運ばれているそうなので、手ぶらで無言の久瀬と部屋へ向かっていた。今はエレベーターの中。超静か、きまず
ちらりと顔を見ても気難しそうな顔をしていて話しかけるのもなんかこわい。怒ってる?
「「あの」」
「…佐倉くんからどうぞ」
「えと、なんか怒ってる?」
「え?別に何も怒ってないよ?」
うそつけって言いそうになったけれど久瀬があまりにもキョトン顔だったので口を噤んだ。
「なんで俺が怒ってるって思ったの?」
「や、なんか怖い顔してたから」
「え?そんな顔してた!?」
久瀬は驚いたように自分の顔をさわる。そんな顔してましたとも。怒ってないならなんであんな顔してたの
「ごめん、怒ってはないんだ。ちょっと考え事してただけで」
「ふーん」
どんな難しいこと考えてたんですかね。俺には関係ないけど
「久瀬くんが言いたかったことって?」
「んー、なんでもない」
絶対なんかあるやつじゃん。別にわざわざ聞かないけど
「そか」
そんなこんな言ってるうちに8階に着きましたとさ。途中でだれも乗ってこなかったからすごい早かったな
809号室の前まで他愛ない話をしながら歩き学生証をかざして部屋の中に入ると、見覚えのないスニーカーが玄関にあった。
「同室の人もういるみたいだね」
「うん」
やっぱり久瀬ではなかったらしい。
すごいかっこいいスニーカー、あとでかい。久瀬よりもでかい。
「ていうかこのスニーカー……ごめんちょっと先に入るね」
そう言って先に廊下の奥のほうへ入っていった。心当たりでもあるのかな
なにやら久瀬が奥のほうで話しているが内容はわからない。とりあえず中に入ってドアを閉めると鍵のかかる音がした。オートロックか、学生証忘れないように気をつけよ
「廊下なが」
入ってすぐ左側に、扉付きの靴棚?が壁に埋め込まれて3つある。廊下には左側に2つ、右側にひとつ扉があって廊下は突き当たりで分かれているようだ。
なんとなく一番奥の靴棚の開いてみたらかっこいい靴が5足入っていた。棚は全部で7足入るようで一番下は長靴やブーツ用なのか他のスペースより高さがあった。スニーカーの持ち主の棚だったかな。のぞいちゃってすみません
靴を脱いでとりあえず久瀬が向かった方を追いかける。廊下の突き当たりを右に曲がろうとしたところで久瀬と鉢合わせた。
「おっと、ごめん。ぶつかるとこだった。同室の人知り合いでさ、疲れたからちょっと寝るって」
「そっか」
もう靴片付けてるくらいだしね。荷解き終わって疲れたんだろな。挨拶は後でするか
「部屋割りって……」
「あぁ、なんか決まってるみたいだよ。ダイニングテーブルに紙が置いてあるって」
「だいにんぐ……」
どのドアよ?
「あ、ここだよ」
久瀬は玄関から見て右側にあった扉を指して言った。迷いがないけど中等部寮も同じつくりなのかな
俺のほうが近かったのでドアを開けて中に入る
「しっかりしてる」
「だよね」
入った先はリビングダイニングだった。
リビング部分にはふかふかそうなソファセットと楕円形のローテーブルに大きなテレビがあって、この部屋は本当に男子高校生が住む部屋なのか疑問に思う。
部屋の奥に4人掛けのダイニングテーブルの横にキッチンがある。
キッチンも広く、レンジの他にオーブンまで本当に(以下略)
キッチンは時々使うだろうから慣れるように頑張るとして、とりあえず今は部屋割り確認しなきゃ。
久瀬に聞いた通り、テーブルの上に部屋割りの紙が置いてあって、俺の部屋はリビングとは反対の奥の部屋だった。隣が久瀬で、リビング側の部屋が
「高崎大牙さん」
「そう、高崎はちょっと気難しい奴だけどいいやつだからあんまり構えないでね」
「はぁ」
高崎のことはくん付けしてないのか。俺も頭の中でくん付けしてないし、呼び方ミスらないうちに変えとこっかな
「俺のこと、くん付けしなくて大丈夫だよ。俺も久瀬って呼んでいい?」
「えっ、あ、うん、じゃあ……佐倉、よろしく」
「うん。改めてよろしく、久瀬」
これで呼び間違えて気まずくなる未来は回避した。でもなぜそんなに真っ赤に?
久瀬は赤くなってまたもにょもにょしていた。もにょもにょするの好きだねきみ。
そんなことより荷ほどきしなきゃか、めんどくさ
部屋割りが部屋の図面になっていたおかげでトイレとお風呂の場所も分かったので、もにょってる久瀬を放置して自分の部屋に向かう。
自分の部屋には窓がひとつと備え付けのベッドとドアの横にクローゼットがあって、仙波さんの言う通り荷物が届けられていた。
「ここはまだ普通でよかった」
さすがに自分の部屋ですら分不相応だったら息が詰まるもんな。
一息ついたところでメッセージの通知音が鳴った。
『父さん:そろそろ寮に入ったころかな。気をつけて、でも楽しんで過ごすんだよ』
「心配性だな」
いつも通りの父さんに微笑し、荷ほどきを始めた。
------------
作者より
私の拙い説明ではあまりにも部屋の間取りが表現出来ないので画像にて失礼します
建築関係なんにもわからないのでこんな間取りだといいなというファンタジーでお願いします!
最初のコメントを投稿しよう!