占いなんて大嫌いだ!

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「今日の運勢第一位は〜〜〜」 テレビから聞こえてくるアナウンサーの軽快な声が耳に届き、俺は眉をピクッと歪ませる。 「おめでとうございます!おうし座のあなた!」 それはよくある日常の一コマ。 朝のニュース番組の占いコーナーだった。 「あら、こーちゃん一位だって。よかったねぇ。」 テレビを指差しながら、番組を見ていた母が俺に報告してくる。 俺の星座の順位を気にして、一喜一憂してくれる母の気持ちに水を差したくはないが、 俺はなんとも、喉に小骨が引っかかった時のような微妙な嫌気を感じる。 「母さん、こんなの当たんないよ」 「そんなことないよ。お母さん毎日この占いを見てるけどね。言ってる内容とか結構当たるんだよ。ちなみに今日のお母さんは8位」 母はさそり座だ。8位とはなんとも微妙な順位だ。 「え〜、今日のおうし座は…新しい出会いに恵まれるかも!ラッキーアイテムは虫メガネです!」 アナウンサーが続いて、占いの内容を読み上げたのを聞いて母はさらに嬉しそうにテレビを指差す。 「ほら、こーちゃん!新しい出会いだってよ!よかったねえ。今日お友達きっとできるね」 「だから当たんないって。それにラッキーアイテム虫メガネってなに。新しい出会いと虫メガネがどう結びつくんだよ。ふざけてるじゃん」 「でもこーちゃん、今日はじめて学校に行くんだよ?お熱が下がらなくていけなかったからね…。 教室には知らない子がいっぱいだから、もしかしたらお友達たくさんできるかもねぇ」 「………いや、全員が知らないやつじゃないし」 俺は、不破 幸は今年の春、めでたく高校一年生となった。 第一志望の高校に合格し、4月6日に入学式を迎え、 新しい学校生活のスタート。 と思っていたのだが…。 現在、4月19日。 俺は今日はじめて、学校に行く。 インフルエンザで寝込んでいたからだ。 タイミング悪く。 「こーちゃんはね、なんでかいっつも悪いタイミングでかかっちゃうねぇ」 「もう慣れたよ…」 小学校の遠足や運動会、中学校では修学旅行等々…… なにかしらのイベントが起こるタイミングで、 俺はいつも怪我やら病気やらに見舞われる。 そう、俺はタイミングが"悪い"のだ。 「でも、占いの結果が良くてよかった…。悪かったらもう一日休ませようかと思ってたよ」 「占いが悪いから休むってなに!?」 母の密かなとんでも思想に思わず、声を荒げる。 そんなんで休んでたらいつまでも学校いけねぇよ! 「母さん、こんなの嘘だよ!?これが本当だったら今日は全世界のおうし座が新しい出会いをすることになるんだよ?この世におうし座何人、何万人いると思ってるの?」 多分、何万人どころか、もっとたくさんいる。 おうし座の皆さんは。 「そんなに都合よくいくんなら、恋人がいなくて寂しい人間なんて存在しないよ!」 「こーちゃん、今日彼女できるのかなぁ」 「友達から難易度あげないで!」 「でもね、そんなにおうし座の人がたくさんいるなら一人くらいこの占いに当てはまる人がきっといるとお母さん思うなぁ」 「だからつまり嘘なんだよ!可能性の話じゃん!!ってもう、こんな話、時間の無駄!もう学校いくからね!」 「虫メガネもってく?」 「そんなの持ってたら逆に友達なくしそうだよ!いってきます!」 母が虫メガネを持ってくる前にと俺は足早に家をでていった。 ………占いは嫌いだ。
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