1.ひねくれ天邪鬼

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 ──それは、何千年も昔の話。  町には魑魅魍魎(ちみもうりょう)が溢れ、人々は恐怖に怯えて暮らしていた。ある者は化かされ金を取られ、ある者は襲われ大怪我をし、ある者は攫われ二度と戻って来なかったという。そんな妖怪たちによる被害が後を立たず、当時の政府は陰陽師(おんみょうじ)と呼ばれる不思議な力を操る者たちに妖怪退治の命を出した。  陰陽師たちは悪事を働く妖怪を次々に退治していった。しかし、それに激怒した妖怪側もさらに動きを活発化させ一触即発の状態。人間と妖怪による本格的な戦争が起きようとしていた。そんな危機に待ったをかけたのが、陰陽師の中でも紫月(しづき)という一人の男。紫月は人間と妖怪との共存を願っていた一人だったのだ。  そんな彼は妖怪の(おさ)と話し合いの場を設けた。結果いくつかの掟を作ることで戦争を回避した。妖怪と人間の世界に境界線を引き、妖怪たちは人間たちの住む現世に勝手に入って悪さをしないこと、入る時は必ず許可を得ること、掟を破ったら強制的に隠世に送り還すこと。また、人間は妖怪を無闇に殺さないこと、現世に行った妖怪を迫害しないこと、などを取り決めたそうだ。  そして、それらの入国を管理する者として各地の境目に神社を建て、それぞれに送還師(そうかんし)という役職を置いた。もちろん、その役職には交渉に当たった紫月とその一族が着いた。  以来、紫月の血を継ぐ者は送還師として妖怪たちの入国の管理、並びに取り締まりを行っている。
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