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(あぁ……幸せにしたい)
心の底から明登をもっともっと幸せにしたいと思った。
愛おしさが溢れるまま、そっと明登の手を取ってギュッと握った。
「ん?」
「私も協力すよ、明登の夢を。お金貯めて、明登が望む会社を起こして、そして──」
「そして?」
「私を社長夫人にしてね」
「ははっ、なんだそりゃ。そんなのになりたいのか?」
「結果的にはそうなるって話でしょう? いいから叶えてよ、玉の輿」
「わがままだな、芳香は」
「こんなのわがままの内に入らないわよ。明登と夢見るささやかなものよ」
「ん、解った。叶えてやる──っていうか、芳香のわがままは俺が全部叶えてやるよ」
「ふふっ、期待しているね」
一度は手放した玉の輿の夢になんの未練もなかったけれど、でも好きな人とならその夢を見たいと思った。
「芳香、ありがとう」
「なぁに、いきなり」
「別に。言いたくなっただけ」
「ふぅん」
徐々に眠りに誘われ、ふたりくっついて夢の中へと堕ちて行く。
ふたりなら何でも出来る気がする。
ふたりなら何処まででも行ける気がする。
いい事も悪い事もふたりで乗り越えて、そして、ふたりで幸せになろう──。
クリミナルラバー(終)
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