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 オフィスに戻った頃には日は暮れて、室内は暗くなっていた。大型の液晶ディスプレイだけが、ぼうと青白い光を湛えて、まるで人がそこにいるかのように存在を主張している。  俺はカメラバッグをデスクに放り出し、ギシギシ音を立てる椅子に腰を下ろすと、大きく息を吐き出して天井を見た。随分ここも古びた。もう十年は使っている物件だった。黒ずんだ天井を恨めしく思った事もあったが、今の俺にはそれも思い出話だった。  『未解決事件を歩く 犯罪現場のその後』。  四年ほど前に、川瀬という大学の後輩の編集者が持って来てくれた現場ルポの連載だった。最初はWeb記事だけだったが、今は本誌にも掲載されて、最近一冊にまとめたソフトカバーが出た。これが売れた。 「先輩、増刷ですよ。今時、紙の本で」  電話口で、川瀬は少し昂揚した感じで言ったものだ。  あえて粒子を粗くしたモノクロの画像を使い、ルポの文章も書体に気を使ってひと昔前の文庫風にした。その辺りの装丁やデザインは川瀬のセンスだった。ただ、写真を撮り、文章を書いているのは俺だった。
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