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 *  沼坂玲奈の父親の遺体は、真由美の供述通り××山で発見された。  日照り雨の降る四月の終わり頃のことであった。  遺体には激しい暴行が加えられた形跡があったという。  家庭に居場所のない少女たちが育んだ歪な友情は最悪の形で終わりを迎えた。けれど彼女たちの復讐はまだ終わっていない。彼女たちは復讐の最後の一手を社会の人々に、この記事を読んだあなたたちに委ねたのだ。  面会室を出る直前に彼女が言った言葉が脳裏に蘇る。“正義”という二文字の言葉。  けれど私がこの記事を書いたのは、義憤からではなく記者としての使命感があったからだ。私には小野田真由美の言葉を世間の人々に伝える責任があるのだ。だからこの記事を世に出した。  けれど本当にそうだろうか。  記者としての使命だの責務だのと都合のいい言葉を並べ立てているだけで、本当は心のどこかで望んでいるのではないだろうか。沼坂玲奈を追い詰めた男たちに正義の鉄槌が下ることを。  自分は暴走した正義の徒ではないと言い切ることができるだろうか。 (了)
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