カフェタイム

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カフェタイム

 勇者と共に王都を見て回り、王様との謁見も済ませた。それならば、直ぐにでも次の予定に移りたいところだったのだが……謁見による精神的な負担は思っていた以上に大きかった。なので、一旦カフェで休憩を取ることにした。  王都のカフェは、とてもお洒落だった。流石は王都だなと思える位にお洒落だった。そして、お値段も王都仕様だった。つまり、どれもこれも高い。シ◯ノワールが恋しくなるレベルで、量の割に高かった。だが、その値段を払ったからこそ、長居をするにも良心が痛まないとも言える。そう、都会の高めの珈琲店で、開店時間から夕方まで粘れる人が居る様に。 「やっぱり、謁見は慣れないなあ。謁見の前から吐きそうだったよ」  苦笑いをしながらデコレーションに拘られたケーキを口に運ぶ勇者。ケーキは小さいながらも様々な工夫が凝らされていた。先ずは、横面に綺麗に塗られた白いクリーム。上部には、可愛らしいサイズに絞り出された黄み掛かったクリーム。そして、触れば壊れてしまいそうな飴細工に新鮮なベリー。王都の何処かで栽培しているのだろうか、ケーキに乗せられたベリーはみずみずしく酸味も程良かった。  ケーキに小さなフォークを差し入れれば、薄紅色をしたクリームが顔を出す。このクリームは、上部に乗せられたクリームよりは硬く、流れて皿を汚すことはない。また、クリームの中には、咀嚼するとヒンヤリとする粒が混ぜられており、スポンジの軽さとクリームの甘酸っぱさの後で口内が冷やされる。とても、工夫のなされたケーキだった。 「だけど、その吐き気も謁見が終わったら収まった様だな」  勇者が半分程食べたケーキをフォークで指し示した。すると、勇者ははにかんだ様に笑う。 「そうだね。むしろ、謁見しなきゃならない緊張で疲れて、甘いものが欲しくなった。だけど、そんなには食べられないかな? この量が丁度良い位」  食べさしのケーキを、左手の人差し指で示す勇者。どうやら、私と勇者との育ちの違いがこんなところにも出た様だ。
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