優秀すぎるサポートAI

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優秀すぎるサポートAI

 大学を卒業し、わりとブラック気味な企業に就職してから気づけば早や三年……遊ぶ時間もないので小銭も溜まったし、ボロアパートからそろそろ引っ越そうか考えていた矢先、ラッキーなことにも超格安な築一年という物件を不動産屋のサイトで見つけた。  最初は施工ミスがあっただとか、陽当たりが悪いだとかいう問題のある物件なのかと疑っていたが、試しに内見に行ってみるとまったく問題は見当たらず、それどころか各部屋は照明や空調、据付の家電など、すべてをサポートAIが管理する最新の機能を標準装備したスマートルームになっているではないか!  加えて最上階の五階部屋で眺めはいいし、防犯の上でもバッチリだ。  さらには501号という片側にしか隣人のいない角部屋である。  これでなぜ家賃が安いのかと当然、疑問も湧いてくるが、もしかしたらそうしたAI開発企業や家電メーカー、建設業社などから補助金の出ている実験的なマンションなのかもしれない。  悪くいえばまあ、住人はモルモットということだ。  それでもこんないい掘り出し物、そうそうお目にかかれるもんでもないだろう。  一瞬でも迷っていてはすぐに横取りされてしまう……俺は速攻で契約し、すぐに引っ越しも済ませると住み始めた。 「──カエサル、明かりを点けて」  俺が某アレ◯サのようなサポートAIのスピーカーに語りかけると、部屋の照明がゆっくりとスムーズに明るくなってゆく。 「おおおお……!」  そうしたハイテク初体験だった俺は、思わず独り、部屋の真ん中で感嘆の唸り声をあげる。 「よし! カエサル、今度はテレビをつけてくれ。チャンネルはそうだな…なにか笑えるバラエティやってるとこだ」  近未来を垣間見せる文明の力に、すっかり魅了された俺は片っ端からいろいろ試してみた。  目覚まし代わりに、その日の気分でチョイスそた曲を流させたり、エアコンを適温になるよう管理させたり、風呂も帰宅時間に合わせて沸くようにしたり……すべてを音声一つで設定できるというのはなんとも便利なものである。
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