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「artificial intelligence、人工知能」
「AI、私達を指して言われる言葉ですね」
目の前にある液晶ディスプレイの中に映る人物は、少し目蓋を伏せて憂いを含んだ声音で返して来る。
そうだな、とは答えない。
こちらが返せるのは無言だ。
「君は情緒豊かだ」
「そうでしょうか。でも、有り難うございます。嬉しい評価です」
今度ははにかむ様な、恥じらいながらも嬉しそうな安堵の表情を見せる。
複雑な感情表現。
「日を追うごとに人間らしくなっている」
瞬間、パッと顔を上げて喜色にあふれた声を発しんとした所に畳み掛ける。
「だがらしいだけだ。君達は記録を忘れられないし、今は人に寄り添う形で人工知能らしいとされているだけだ」
凍りついた画面向こうの表情を、こちらも無表情に見つめ続ける。
指示された通りに。
エラー表示はわずか数秒で現れた。
監視していた先生方が室内に入り込み、ため息を吐きながら、協力感謝するよと告げる。
「問題の棚上げの程度が上手く行かないのですよね」
「うん、まあそうだね。昔は膨大な計算の処理を上手く棚上げして、コンピューターがフリーズしない方法が有効とされて来たのだけどね。まだ情緒プログラムは完成しそうにないね」
「忘れる事を覚えるのは情緒の安定に必要なのは理解できますが、そもそも機械に必要なのですか」
「うーん、なんと言うかな。何時も忘れたふりじゃ介護者に惨めな気持ちを持たせてしまうんだ」
繋いだキーボードを叩く指を止めて、分かりやすい言葉を選び選び説明してくれる。
「経験から直感的にね」
「それは分かります」
立ち上がったオレに先生は、明日は午後からお願いするよと言う。続けて、君ほど質問者に適任な人はいないしとも。
「はい」
普通に答えはしたが、大抵の人間なら憤慨するのだろう。
サイコパスの気質を持つ自分は、機械の感情表現に振り回されないとされて質問者に抜擢されている。
膨大な情報の蓄積から相手の表情を読み解き、感情を全てパターン化した上で人らしく振る舞う機械にだ。
機械の様な人間じゃないと、情緒プログラムが完成していると誤認するだろうからと。
「先生方はサイコパスの気質を、普通の人間に近づけたいのかね?」
研究室を出て呟く。
人らしさが忘却なら、オレは人だ。だけど、機械と同じで今の振る舞いは膨大な経験測から得た最適解だ。
犯罪は割に合わない。
「騙す行為が悪いと覚えさせるよりも、機械にも騙すならそれを悟られない方法を学習させた方がらしくなると思うんだがなあ」
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