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自慢げにグッズを見せびらかせ(僕のグッズだけど)、やっと満足したのか月子さんがひと息ついた。
正直、こんなにたくさん購入してくれたのは嬉しい。月子さんの口癖通り、ファンとスタッフが僕をアイドルにしてくれてるわけで。グッズを買って、応援してくれているのはありがたい。でも、月子さんは僕にとって特別な人なんだし……
「あ、ありがとう……でも、月子さんだったら、グッズ、プレゼントしたのに……」
僕の言葉を聞いて、月子さんがキッと睨む。
……こ、怖い!!
「それじゃ、意味ないんです!! やっと、きぃくんを推す事ができるようになったんですから! 推して、推して、推しまくりますよ!!!」
月子さんの圧が強すぎて、僕はもう何も言えなくなってしまった。
……ちょっと待って? 月子さんは僕のファン……なのに、なんで、僕、怒られてんの?
月子さんは腕時計にチラリと目をやると、スイッチが切り替わったのか、以前と変わらない淡々とした口調でテキパキと片付け始める。
「では、これで、失礼します」
僕のグッズを紙袋にしまい、お辞儀をした。
「では……」
「あ、月子さん! ちょっと!!」
「なんでしょう?」
月子さんは僕の声に喜色満面で振り向く。
マネージャー時代、こんなに笑顔の月子さんを見たことがなかった僕はドキリとしてしまう。
12歳も年上の女性に失礼かもしれないけど、なんか月子さんってかわいいんだよな。これからも月子さんには僕のそばにいて欲しい……
恋の告白を決意した男の如く、胸がドキドキしてきた。僕は意を決して月子さんに提案する。
「えっと……さ、マネージャーに戻ってきてくれないかな……」
「いやです」
え……はやっ。
ドキドキの提案は一刀両断され、即玉砕する。僕はむぅっと口を尖らせた。
「返事、早くない? 少しは考えてよ」
だって、僕のファンなんでしょ? もっと、悩んでよね!!
「せっかく、推し活が解禁になって満喫してるんですよ? マネージャーになったら、公私混同できませんし」
えええ……そんなぁ。
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