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プロローグ
真っ暗になった。
若い女の子達の興奮した声でざわついていた会場が、しんっと静まり返り、前方のステージに何万の視線が集中する。
ゴクンと唾を飲み込む音まで聞こえてきそうな緊張感。女の子達の興奮度がどんどん上昇していくのを肌で感じ、気持ちが高揚していった。
始まりを告げる曲が大音量で流れる。スポットライトを浴びた彼が登場し、光り輝くきらびやかな別世界を私の前に展開していく。
彼、1人現れただけで。
たった、1人現れただけで。
その空間を彼色に染め上げる特別な君。
あなたの一挙手一投足で歓喜の声をあげる女の子達。感激のあまり、泣き出す子の嗚咽も聞こえてくる。
建物が崩れそうな程の黄色い声の塊は、ステージに立っている彼に惜しむことなく注がれた。
手作りの団扇を片手に、溢れるこの気持ちを声に乗せ、喉が張り裂けんばかりに私は叫ぶ。
「きぃくーーーーーーん!!!!!」
華やかなステージに立って微笑む国宝級イケメン、きぃくんこと、葉月輝良くん。
名は体を表すという慣用句通りのキラッキラの光り輝くアイドルで。
私は会えた喜びに限界まで声を出す。
明日の喉の心配なんてナッシング。
推しは推せる時に推せ。
これが私の座右の銘。
もう、私の心臓はやられっぱなしである。
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