【第10話】

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 長身警官は、一旦顔を離したものの、声のトーンを上げ、詰めるように一気に捲し立てる。 「あなたは、浮気したことを奥さんに責められ続けていて、いつしか殺意を持つようになった。その殺意に感づいた奥さんは、日々あなたのパソコンを確認して、あなたが良からぬことを何か企んでいないかをチェックしていた。すると、検索履歴に物騒なキーワードが並ぶようになった。主に、毒関連のキーワードがね。さらには、『推理小説 じわじわ効く毒』といった検索ワードも紛れ込ませて、さも小説を書くために調べものをしているかのように見せかけた。――これが、奥さんの見解です」  すべてが違う。  何もかもが間違っている。  なんでそんな話に……。  しかし、この警官がここまで詳しく知っているということは、彩未がそう伝えたということなのだろう。  ……もしや彩未は、最初からこれを狙っていた?  俺に毒を使った復讐小説を書かせるように水を向けて、毒についてパソコンで調べさせた。  そうすればパソコンに履歴が残る。  これから警察は、俺のパソコンを押収していろいろと調べるだろう。  当然、先日調べた毒に関する様々なキーワードのことを把握するはずだ。スイセンについて詳しく調べたことも。  そうか、そういうことだったのか。  今日レバニラを作ってほしいと言ってきたのも、すべて計算だったのだ。  俺と林太郎が食べないことを知っていて、あらかじめニラとスイセンを入れ替えていたのだろう。
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