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 秘密の隷属関係が始まった、あの秋の日以来、奏人の私室で二人が淫楽に耽る日は満月の夜と決まっていた。  そう決めていると煌に明言されたわけではない。  が、彼が指定してくる夜は、毎月、一度だけ。尚且つ、当日の空には円月が必ず浮かんでいたのだから、部下に奉仕するのはその日だけだと奏人が思い込んでいたのも無理からぬことである。 「甚だ疑問ではあるが……我らに一般的な法則など、無いも同然」  花宮軍曹が今夜を指定してきたのだ。ならば、奏人には拒絶する権利は無い。  初めての夜から、既に季節が三つ過ぎ去っている。その間ずっと、満月が昇れば部下とともに劣情に溺れてきた奏人である。  満月が彼の訪れに関係なくなったとしても、秘密の時間を過ごすサイクルが少々増えるだけのこと。  唯々諾々と、従順に。煌の言いなりになって流されていればよい。  どのみち、近いうちに終幕を迎える関係なのだから——。  
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