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この肌で、この身で、ガイカ先生が天才であることを知った直後だ。これから生み出される作品はきっと美術界をあっといわせる作品になる。世界を震撼させる作品になる。そう信じている。なら、わたしは、
「ドラになります!」と、先生の瞳をじっと見て、お腹に力を入れて、一音一音確実に発音した。
ユウスケの姿がほんの一瞬だけ浮かび上がったが、強大な墓石で強引に押しつぶした。
先生の目が大きく見開かれた。
「それでこそ、落合聖美だ!」
「ピカソにドラなら、小宮山凱歌に落合聖美です!」
「よくいった!」
先生より、わたしのほうが感動していた。
「先生!」
その時、わたしは本能が剥き出しになっていた。ヒリヒリするほどの剥き出し本能が向かう先は当然のごとく先生だった。先生を犯したいと思った。本能が暴れて、もうわたしの理性では制御不可能だ。
全身で先生に飛び掛かる。奔流にザアザア、バシャバシャと襲いかかられながら、先生のくちびるを犯す。美術の教員を女生徒が犯す。ふたりは重なったまま川底に沈んでいった。
師弟間の露骨な水中キス。──そのとき河原の草むらでスマホを操作している人間がいるなど、わたしたちには想像も及ばぬことだった。
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