「肝試し」

1/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

「肝試し」

 俺はこの頃、よく肝試しをして遊んでいた。友達もいないし、退屈でつまらない毎日に刺激を求めていたのだ。しかしなかなかこれといった心霊現象や怪奇現象に遭遇したことは全くない。俺には全く霊感も無いし、何しろ心霊スポットは俺がスマホマップで「あ、ここ出そうだな」という所を適当にピックアップして選んでいるからな。幽霊なんかよりも不審者や人気のない所を狙ってたむろしている不良に遭遇する確率の方が高い。マジで勘弁してほしい……。 ある日のこと。俺がいつも通りスマホマップで心霊スポットの探索をしていた所、ふと山奥の所に小さな建物がポツンと建っているのに気がついた。 ……見た感じ、普通のトイレだな。 だが俺はこのどこにでもありそうなトイレに不思議な魅力を感じていた。ここならきっと何か凄いことが起きるんじゃないかと期待していたのだ。俺はすぐにその場所に向かうために場所やルートを調べていった。 深夜1時。肝試しをするには絶好の時間帯だ。もう準備も万端、さあ出発しよう……。 ーーこの時俺はすでに嫌な予感が頭をよぎっていた。 車で約1時間。山の奥深くまで差し掛かった所、もはや人がいるような気配が全く感じられない。間違いなく、今まで訪れてきた場所の中でも圧倒的に空気感が違う……怖い。 一瞬戻ろうか考えたのだが、ここなら絶対、何か出る。そう思い、俺はブレーキを止めることなく進んでいく。やはり好奇心に逆らうことは出来なかった……。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!