4、嫌がらせには屈しない

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 ふたたび用意された朝食は予想以上のものだった。ふわふわのパンと具入りのスープに、新鮮な野菜や果物が豊富に並ぶ。  戻ってきたエマがさっそく不満をぶちまけた。 「本当にひどい目に遭いました。侍女長は私に使用人たちの洗濯をさせるんですよ。私はリエルさまの侍女なのに」  エマの愚痴を聞きながら食事をしていると、突然何の前触れもなくアランが部屋へ飛び込んできた。  リエルは身支度もしていない部屋着の状態で、とても王太子に会うような格好ではない。  しかしアランはそんなことも気にせず、入ってくるなり厳しい口調でリエルを責めた。 「リエル。君の話を聞いたぞ。使用人たちに横暴な振る舞いをしたそうだな?」  言い返せなかった侍女長がアランに直接訴えたのだとリエルはすぐにわかった。だが、冷静に対応する。 「殿下、私を訊ねて来られるときは前もって教えていただかなければ、こちらも準備がございます」 「婚約者の部屋に来るのに許可が必要なのか?」 「そうではありません。私は今、部屋着でございます。このような格好を殿下にさらすわけにはいかないのです」  アランは表情を引きつらせた。
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