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「次期王太子妃にこのようなものしか出せないほど、この国の財政はひっ迫しているのかしら?」
侍女長はリエルを睨みつけながら唇を噛む。
「だとすれば大変な事態だわ。すぐにアラン殿下にご報告しなければならないわね」
侍女長はリエルが黙って食事をするとでも思ったのだろう。実際、回帰前のリエルはひたすら嫌がらせに耐えていたのだから。
しかし、我慢したところでいいことなどひとつもない。
しばらく睨み合っていたが、やがて分が悪いと思ったのか侍女長が折れた。
「……使用人が、間違えたようでございます。すぐに、作り直させます」
侍女長が悔しそうに拳を握りしめるのを、リエルはチラ見した。
その後、侍女長はすぐにアランと接触した。
事情を聞いたアランは驚き、表情を硬くする。
「何? リエルがそのようなことを?」
「はい。気に入らないからと私たちに八つ当たりをされるのでございます。何よりも王太子妃の立場を利用して私たちを脅すのです」
侍女長はいかにも苦労している素振りを見せながら、アランに訴える。
「使用人たちはみな、恐れて仕事も手につかなくなっております」
アランは腕を組み、渋い顔つきでうなずく。
「そうか。すぐにリエルと会おう」
それを聞いた侍女長は頭を下げながらにやりと笑った。
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