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 自慢じゃないけれど、小学生のときの私は女子なのか男子なのか分からないような女子だった。外で野球をするのが大好きで、汗をかくから髪もベリーショートで、スカートなんか履いたこともなかった。 「性別間違って生まれてきたっちゃね、お前」  なんて男子からからかわれることに対しても、そうかもしれんなんて思って気にもしなかった。腕相撲で勝てることの方が嬉しかった。  「この男女! もう一度勝負せろや!」  腕相撲後中川に言われて、 「また負けたいと?」  と返す。いつものことだ。 「うっせ! 勝ち逃げなんて卑怯たい、ゴリ女!」  中川が煩いので、仕方なく応戦しようとしたときだった。 「君、ほんとはこの子と手を繋ぎたいだけでしょ? そんなんじゃ伝わらないよ?」  東京から転校してきたばかりの男子、矢口がくすくすと笑いながら言った。 「ばっ、ばか言うんじゃなか! 誰がこの男女と手なんか繋ぎてーもんか! だったらお前、この河合に腕相撲勝てるとや?!」 「うーん。自信はないけど」  私は流れで矢口と腕相撲することになった。  矢口は色白でほっそりとした指をしていて、私の方が男子の手みたいだった。 「レディーゴウ!」  中川の掛け声と共に、力をグッと入れる。  矢口は見かけよりかは力があったけれど、これなら勝てそうだと思った。 「ショートカットってさ。美人じゃないと似合わないんだって。君、ベリーショート、すごく似合ってるね」  矢口がそう言った瞬間。  私は自分の顔がかあっと熱くなるのを感じた。とたんに力がぬけてしまって、私は負けてしまった。 「おいっ! 矢口! 勝負中に話しかけるなんざ卑怯やぞ!」  中川が喚いていたけれど、私にはどうでもよかった。 「ごめんごめん」  イタズラが見つかったような顔で笑って矢口が言っている。  私は。  なんでなん?  体中が熱くて、心臓がどくどくと脈打っていた。  矢口の言葉は私を一瞬にして女にしてしまった。小学校五年生の五月のことだった。  
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