第一章 樹下の接吻

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 それに彼女は、とても自然に日本人と違う容貌の自分を受け入れてくれた。  そのときの天音には、それが何よりの救いとなった。 「おお桜子、迎えに来てくれたのか」 「お父様ぁ」  彼女は吉田伯爵に飛びついた。  伯爵は桜子を抱き上げると、その柔らかそうな頬にキスした。  くすぐったそうに身をよじりながら、彼女は一生懸命、伯爵に話しかけた。 「あの子が桜子のお帽子を拾ってくれたの」  伯爵は、彼女を地面にそっと下ろし、言った。 「天音だよ。英国から連れてきた。屋敷で働いてもらうんだ」  彼女はぱっと顔を輝かせた。 「お父様、桜子に王子様を連れてきてくれたの? わたし、王子様とお友達になれるの?」 「ははっ、残念ながらお友達にはなれんな」 「どうして?」 「桜子にふさわしい王子様は、お前が結婚する年になったら、わしが連れてきてやるから心配いらんよ」  彼女は小さな頭を左右に思い切り振った。 「いや! 桜子、この王子様がいい」  そう言って、桜子は天音の腕を掴んで、にっこり笑った。
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