椎名くんは信じない

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「あ」  突然、何かに気がついたような顔つきで、元・友達の椎名くんが呟いた。 「どうしたん?」 「あんなところに占いの館があるけど、行ってみる?」  椎名くんが指をさす方向へ顔を向けると、フードコートの片隅に作られていた小さな占いコーナーに座っている怪しい衣装を着たおばさんと目が合った。  長い夏休みに飽き飽きして、どこかに出かけたいけどお金もなくて、できれば涼しくて一日中過ごせるようなところに行きたいなんてわがままな注文をした私に、彼が提案したのはこの大型ショッピングモールデートだった。  地下一階から四階まであって、いろんな専門店がズラーッと並んでいて、どこに行っても楽しそう。しかも歩くだけなら一円もかからないときた。  そりゃあいい考えだというわけで、私は二つ返事でOKした。    このショッピングモールに来てよかったと思ったことはもう一つある。  それは、施設が巨大なゆえに郊外に建てられているから登校圏外になり、同じ高校の子と出会う確率が低いということ。  別に、椎名くんと付き合っていることを友達に隠したいわけじゃないけど、デートしているところを見られるのはまだ恥ずかしい。椎名くんとお友達をしていたのは一年以上で、最近やっとステップアップしたばかり。基本的には友達と変わらない状態の私たちだけど、せっかく二人きりで周りの目も気にしない場所に来たんだからちょっとはイチャ? 的なスキンシップもしてみたい。  そう思っているのは私だけかな。  クールな横顔はめったに笑うことがない。  椎名くんの考えていることが少しでも分かったらいいのになって思っていた矢先に、占いの館だなんて。  これはもしかして、運命の出会いかも。  
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