いつもニコニコ オメガのヒカル

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 磨かれた美しさっていうの? 男でも女でもない中世的な感じで、綺麗さが半端ないって感じなんだよなあ。  そこに立っているだけで、もう空気からなんから違うんだよね。実際会うと、俺にはこういう子のほうが似合うんじゃないかって、やっぱ思うよな。    そんな上流オメガの中でも格別なのが、花咲家の斗貴哉(ときや)様だ。  この俺ですら思わず見惚れてしまうほどの美しさ。    以前親父に連れられて行ったパーティでの斗貴哉様は、もうなんていうか佇んでいるだけでもう空気が違うし、そこだけ別世界というか、ほんと言葉では言い表せないくらい突き抜けた異次元の美しさだったんだよな。    なんかもう匂いとか、すぐ近くに花でも咲いてんのかってくらい芳しくて、挨拶程度でこの俺がオメガに緊張するなんてっていうくらいガチガチに緊張したくらい。  声もすげー良かった……。    斗貴哉様は実は30歳すぎてて結構おっさんなんだけどまだ独身で、元華族のお家柄であるのにこれまで誰とも添わなかったのは、病弱でこれまで家に篭りっきりだったからだったって話だ。    なんというかあの守ってやりたくなるような儚い感じが、おっさんでも全然イケるって俺思ったね。  あーあ、ヒカルがいなかったら俺にもチャンスあったのかなって。あの時は本当に残念に思った。    そうそう、斗貴哉様が婚約したのちょうどあのパーティの直後くらいだったんだ。お相手がまさかの俺と同い年。  そのパーティは去年のことだったから、俺が17歳で斗貴哉様とは確か……15歳差!  同じ年のアルファって聞いてへえ〜ってすっげー興味が湧いて、斗貴哉様と婚約だなんて誰だよってちょっと調べてみたらさ、なんと俺と同じ学校の奴だった。    宮前征佑(みやまえまさすけ)。まさかこいつだとは。    こいつ、すげー嫌な奴でさ。俺、大っ嫌いな奴。だからこいつが斗貴哉様の婚約者だって聞いて、すっげーショックだった。  よりによってこいつかよ。       「ヨウちん何見てんの?」 「んー……べっつにぃ」 「あ、宮前じゃん。なんだあいつもうお迎え? 学校まだ終わってねーのに、早退して仕事かー」    授業の間の休憩時間。窓から校門に歩いていく宮前を見つけた。  忙しそうに早足で校庭を横切る宮前。校門脇には黒くてデカい車が横付けされているから、たぶんそこに向かっているんだろう。    宮前は高校生ながら、もう親の経営する企業に籍を置いているらしい。  でかい会社だから今から働いてしっかり会社に馴染ませておいて、大学出る頃にはすでに幹部候補として働く未来が待っているんだってよ。   「宮前、まだ卒業前なのにもう会社で幹部候補として働いてんだろ? しかもあの大手通信企業って、マジすげーな。大学も行きながら仕事もするって、しかも大学は海外だっていうじゃん。マサチューセッツだっけ? すげーよな。あと自分でも起業するって話だしさ、いやーアルファってのはすげーな。ヨウちんも海外の大学受けんの?」    受けねーよ!!!!  海外には旅行でしかいかねーよ!!    宮前もこの学校で数少ないアルファの1人だが、こいつほどムカつく奴はいない。  俺の方が家柄は上なのに挨拶一つしねーし、俺よりも身長高いからって上からジロジロ見てくるのも礼儀がなってねーし、ちょっと俺より頭いいからってさ、あいつの見下したような態度がまた腹たつ。  女子にはかっこいいって人気みたいだけど、背が高いだけだろ。顔だってスタイルだって俺のほうが上だっつーの!  
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