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星との出会い
(…座ってる)
鎌田渓が1ー2の教室に入る…と。
数人の男女たちが談笑している光景が、目に飛び込んできた。
渓の席には、すでに誰かが座っている。
高校に入って、いきなりくじ引きで席替えさせられて、いまの席の並びになった。
出席番号順のままで良かったのに…。
自分の席に座れないので、
その場で立って、どいてくれるのを待つしかない。
渓は途方にくれて、小さなため息をついた。
輪の中心にいる吉岡颯汰が、
そんな渓に気づいて……。
「おい! 鎌田サン来たから、お前らどけ。邪魔になるだろ」と周りに呼びかける。
「は~い」
と、集まってた人たちはバラバラに散っていった。
「ごめんな!」
隣の席に座る吉岡は、ちっとも悪くなさそうな声で渓に詫びてくる。
吉岡は陽気で笑顔が多い、爽やか男子だ。
陰気だと自覚している渓にとっては、眩しすぎる存在……。
「…………」
渓は黙って自席に座った。
(さっきまですわられてたから、椅子がぬるくて気持ち悪いっ…!)
内心ムカムカしながら。
カバンから教科書を取り出す。
「鎌田サンは部活、どこにするの?」
吉岡が突然聞いてきた。
「え?」
「…部活の希望用紙提出、今週の金曜日までだったじゃん」
「…まだ決めてない……けど」
サッと目を泳がせる。
「だったらサッカー部のマネージャーやらない? うちの高校、サッカー強豪校で、外部からもけっこう注目度高いよ」
「やらない」
「えー! 即断?! 早くない?」
吉岡がわざとらしく驚く。
大声をあげたものだから、クラス中がこっちを見る。
中には、渓を睨み付けてくる女の子もいた。
さっきたむろっていた中の1人だ。
(……っ!)
渓はガタンと席を立って、教室を飛び出した。
「あ、おい!」
背後で、吉岡が慌てる声が聞こえた。
教室を出てすぐ、廊下で誰かにぶつかる。
「ぶっ」
まるで壁のように硬く、
もろに渓の顔面に当たったものだから、痛くて鼻を押さえる。
目線を上に上げると、白衣姿の教師らしき男が目の前に立っていて。
メガネの中の眼光が鋭く、渓をじっ…と見つめている。
(怖い!)
フラッシュバックが起きそうになり、
渓は慌てて飛びのいて。
そして、廊下を駆けていった。
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