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୨୧┈ Postscript ┈୨୧
赤でたくさんの修正を入れた読みにくい原稿をにらむようにチェックしていた私の担当者は、ふと原稿から目を離し、すすけた天井を仰いだ。
「玄井先生……、」
縁なしの眼鏡からのぞく瞳は、とてもつぶらだ。
「僕は、精一杯『生きて』いると言えるのでしょうか。」
つぶやくように発せられた彼の言葉は、とても優しく哀しげに響き、部屋のいたる所に、溶けるように吸いこまれていった。
私はあえて何も言わず、彼の横顔を見つめた。
目の前で天井を眺めている青年の瞳は、何かを求め、探し、迷っているような複雑な色をしていた。
彼は、とても魅力のある青年だ。大人びた少年のような彼の顔には、落ち着いたグリーン・フレームの縁なし眼鏡が居心地が悪そうに座っている。
天井を眺めていたのはどのくらいの時間だったのだろうか。彼は、そのつぶらな瞳をそっと原稿に戻した。
私は、黙々と原稿のチェックをする担当者から目を離し、膝の上でうたた寝をする白猫をなでながら、絵画のような窓の外をぼんやりと眺めた。
『お前、幸せか?』
私は窓の外を見たまま、喉の奥で、あの質問を白猫と自分に問い、答えを探した。
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