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くたくたになって、いつレオンが終わったのかもわからないまま眠りについた。
夢の中で幼いエルマは誰かに抱かれていた。誰だろうと見ようとしてもぼんやりと靄(もや)がかかったようによく見えない。
なにか大切なことを忘れている気がする。
「すぐに戻るよ」
大きな手が幼いエルマの頭を撫でた。
「お土産買ってきてね」
エルマが言うとその誰かは、これ以上ないほど優しく微笑んだ。
記憶の底にある懐かしい記憶。その声が誰なのか──。
目を覚ますと、夢の中の手はレオンの手に変わっていた。窓から日が差している。すでにレオンは起きていて、エルマの髪を撫でていた。
「思い出した。うんと小さい頃、父と一緒にいた記憶がある」
生まれる前に母とは別れたとなんとなく思っていたが、そうではないのかもしれない。
「そうか」
「きっと私たちを捨てたんじゃないと思う」
「あぁ、俺もそんな気がしてきたよ」
レオンはいくつもの難題を解いて、エルマを暗い森から連れ出した。
「レオンは私の騎士だった」
「あぁ、俺も大切なもののためには手間暇惜しまないたちだからな」
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