シャドウレイン

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 組織から依頼されたのは、『例の女怪盗がウチの組の秘密情報や金を狙っているんだ。悪いが、その女怪盗を始末してくれ』という内容だった。  向こうは身分を明かしている。  池袋近辺を縄張りにしている暴力団組織。  こっちの身分は明かしていない。ただ、彼らには『シャドウレイン』というコードネームだけ伝えている。 「女怪盗・・・?引退したという、ビークィーンの事か?」  変声機を使って会話をするのも5年が過ぎれば慣れた物だった。 『あぁ・・・。4年前に復活したらしく、また仕事を始めてな・・・。組織の金を何度も奪われ、こっちは大きな取引前に大損害が出て困っているんだ』  大きな取引に損害が出ていると言うが、それは麻薬取引の事だろう。その情報を得たら、この組織も近々潰す。  父親殺しの情報を得られない組織など、単なる害虫でしかないのだから。 「その大きな取引は、いつなんだ?」 『あぁ?何でそんな事を聞く』 「それまでに。女怪盗ビークィーンを始末してやるよ」  相手の男は電話口の向こうで鼻で笑った。 『金はいつもの通り、口座に振り込んでおく。それで良いんだな』 「あぁ」  何も多くは語らず、ただ返事をするだけだ。
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