第1話「勇者、見参」

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第1話「勇者、見参」

 和と洋が融合した国「ヨウエード王国」、そこは、まだ未発達であった。  本国は、エード国とヨウ国が合併したことで、成立した。成立の経緯は、国王同士で交友があったことかららしい。  しかし、その他は、公平にいかない。  近年、「革命軍」という反乱組織が出現した。彼らは、国家への襲撃を続けている。構成員は、本国の人口の三割を占める。  「目的は、王座奪還。」  城門に放たれた矢に巻き付けられた手紙に、そう書かれていた。失業や貧困など、上手くいかない人生は、国家のせい。こう考える国民が波及のように広がり、自分たちが支配し、思い通りにいく国を築こうと、行動に走った。国家は、そういった経緯から、構成されたと推察した。  魔国が現れてから、国王の暗殺未遂、多くの政治家の暗殺事件が頻繁に起きた。衛兵団は、事件に関与した数人の魔国の一員を逮捕したが、彼らは、口を割らなかった。いくら体を痛めつけ、血を流したとしても。  それ以来、警備が強化されてから、新たな手紙が届いた。  「明朝九時より、城攻めを開始する。」  城攻めをされては、城下町の町民に被害が及ぶ。陸軍長官の「サウバ・シンイチ」は、住民全員に、自宅待機命令を下した。住民第一として、一部の衛兵を城下町全域に配備した。  国家は、重大な社会的悪と見なし、「魔国」と呼んだ。  魔国に対し、国王「カンビレ・プレペアー」は、呆れていた。生ぬるい考えから、世間が巻き込まれていることに。  そして、太陽の光が広大な平原を黄金色に照らす今日、魔国との内戦が始まろうとしていた。    戦の前、ヨウエード国王は、息子の「オーペヤ」を心配していた。  彼は、鎧をまとったオーペヤを王室に呼び出す。  「オーペヤ、お前は、まだ戦闘経験が浅い。総大将は、軍の長に任せておけばよい。」  「父上、私は、逃げも隠れもいたしません。国民にそう示したいのです。例え、命を落としたとしても、国のためなら、惜しくありません。」  「オーペヤ・・・。」  「では、行ってまいります。」  オーペヤは、そう言い残し、戦地へ向かった。  戦は、城下町を出てすぐにある、ヨウエード平原で行われた。  本国は、国土が広いものの、未開発な土地が多い。ヨウエード平原は、それを物語っている。戦争をするには、罪のない国民に被害が及ばず、好条件な場所だ。  ヨウエード軍は、約千人のうち、三百人ほどの兵が戦地に立つ。  騎馬隊に紛れ、待機するオーペヤの前に、一人の兵が駆けつけてきた。  「申し上げます! 魔国の軍勢、およそーー。」  「もう、遅い! すでに、ベイパから聞いている。」  ベイパとは、ヨウ系の兵「ベイパ・マウント」のことだ。合併後は、元ヨウ国民をヨウ系、元エード国民をエード系と呼ぶ風習がある。その子孫からは、見た目や習慣、人名から判別される。人名の場合、下の名前で分かる。  一時間前、ベイパは、杖を片手に呪文を唱え、第三の目を生み出した。魔法上級者なら、羽を生やし、自在に移動する事ができる。使用中、自分自身の視力は、第三の目に集中される。本来ある自分の両目は、盲目に近い。ちなみに、ベイパは、上級者だ。  そして、第三の目を遠くにいる魔国の軍まで、見渡したのだ。  彼は、にやりと笑みを浮かべながら言った。  「魔国の軍勢は、およそ二千人。大半が貧民です。我々の勝利は、確かかと。」  「そうか。相手は、きっと、戦闘能力のない馬鹿の集まりだ。先手を打てば、こっちのものだ。」  「魔王の首を前に飲み明かしている夜が、今にも頭に浮かびますな。」  オーペヤは、エード系の兵に、ここまでの経緯を話した。彼は、馬から降り、こう言った。  「そういうことだ。無能なやつには、用はない。さっさと失せろ。」  オーペヤは、エード系の兵の背中を押し、地べたに転ばせた。彼は、鼻で笑い、馬に乗った。  「皆の者、行くぞー!」  「おー!」  騎馬隊を最後尾に、一斉攻撃を始めた。  自分だけ置いていかれた。大勢の馬の尻が小さくなるのを眺めながら、彼は、そう憎んだ。何かを小声で言って。  「くたばれ、バカ息子。」  その言葉は、現実へと変わる。  ヨウエード軍は、一気に距離を縮める。魔国軍とは、もう目と鼻の先だ。迫っているというのに、彼らは、動じない。しかし、もう少しでぶつかり合うところで、見えない壁が彼らの行く手を阻む。  「おい、何をしている! 早く攻めよ!」  「王子、できません。何らかの壁が邪魔をして、うっ!」  さっきまで、喋っていた兵が倒れた。見えない壁から、銃声が鳴り続ける。早くも、先頭にいる歩兵隊が全滅した。  残すは、騎馬隊百人ほどの軍だ。オーペヤは、驚いた。歓喜の意味で。  「腕が鳴るな。皆の者、爆発だ! スパイクの魔法を唱えろー!」
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