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①
よりによってどうしてこの人が隣の席なの?
小学生の時に発症した心臓病の治療で休学していた私は、入学式から遅れること半年、ようやく高校に登校した。
すでに構築された友人関係の中にすぐに馴染めるとは思っていないけど、隣の席の人とのお喋りから始めて、少しずつ打ち解けていけたらいい。そんなふうに期待に胸を膨らませていた。
それなのに!
与えられた席は教室奥、窓際の一番後ろ。左隣はいなくて、右隣の席は……。
「何? あ、お前……」
怖い! 睨まれた。ちらっと見たら、凄く睨まれた! っていうか、まだ睨んでる。
私は急いで目線を外した。
隣の席の三澤君という男子は、真っ赤な髪で目つきが鋭く、喧嘩の痕なのか、顔や体にいくつかの傷を負っている。
この人絶対に不良だ。どうして唯一の隣の席の人がこの人なんだろう。変な言いがかりをつけられたりとか、怖いことをされませんように。
左手首に付けている、赤いラバーバンドに触れてそう祈る。
幼い頃、好きだったヒーローのショーで貰ったノベルティだ。家族でよく利用した遊園地には人気のヒーローショーがあって、町中の小さな遊園地なのに、専用のショー施設が設けられていた。
心臓を悪くしてからは行けていないけど、最初の入院の前にお父さんにお願いして連れて行って貰い、一番好きだったヒーローに、「がんばれ!」と書いて貰ったラバーバンドは私のお守りになった。不安なことがあると、いつもこうしてバンドに触れて、お願いをしている。
ちらり。三澤君を横目で見る。彼の顔の向きはまだ私にあるようだ。
……どうか三澤君に目を付けられませんように。
ラバーバンドを手首ごと握って、もう一度祈った。
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