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 僕の祖父は、微笑みを絶やさず、いつもにこにこと笑っている、そんな人だった。  かなりの悪ガキだった幼少の頃の僕は、そんな祖父の禿げあがった頭を、調子に乗って、いつも平手で、ぺしぺしと叩いて遊んだ。  しかし、祖父は全く意に介さず、にこにこ笑って僕の好きにやらせていた。  年の近い弟をいじめては、いつも母にこっぴどく叱られていた僕は、何をしても怒らない祖父にすっかり気を許していた。  僕は、家族のみんながそうであるように、そんな祖父のことが大好きだった。  だけど、だからといって、祖父の頭を叩く手を緩めることは、決してなかったのだけれど。
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