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彼の正体
「ねえ、何してるの。優美」
クローゼットの荷物を片っ端から出していると、後ろからあの声が私の背中に向けて告げた。
「那月っ⁉」
そういえば、さっきまで私は彼に対して怒っていたんだと思い出す。
「何、荷物出してんの? 探しもの?」
「卒アルを…探してて…」
「ふうん? 人探してんだ」
私の隣にしゃがみ込むと、彼はかすかに唇を動かして言う。
「え? 何で分かるの⁉」
「いや、大人になって卒アル見返すとかそういう時しかなくない?」
「まあ、そうかも」
「で? 誰?」
「えっと…小鳥居 涼、って人」
その名前を言うと、彼はああと頷き話し始めた。
「涼って、よく遊んでた奴。顔が良いから女子からめっちゃモテる遊び人だよ。そいつがどうしたって言うの?」
顔が良いそのワードに、私のセンサーは反応した。
「そんな人、いた? 会ってみたいなぁ、どんな人か」
「近くにいるよ。何か、バー経営してるっぽい。流石、遊び人」
鼻で笑い、私が散らかした荷物をまとめ始めた。
「まず、片付けよ? これ」
「う、うん」
私もつかさず荷物を集め、ハンガーなどにかけ直す。
那月は覚えてたんだ。小鳥居 涼って人。顔が良い…一体、どれくらいの顔の良さ何だろう? 右上を見上げながら私は考えた。
でも…私の彼氏も相当、顔良いし。まあ、しょせんその程度か、ってくらいだろうなぁ。
「ねえねえ? 優美」
彼の声で妄想から私は呼び戻された。
「えっ⁉」
「俺さ一ヵ月家空ける」
また、いつも通り彼は何もないような顔で告げた。
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