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「僕もね、小林くんにお弁当を作るようになってから、毎日が少し楽しくなったんだ。君が嬉しそうに食べてくれると、僕も嬉しい」
「谷口さん…」
「単純に、誰かに必要とされる事が嬉しかったのかも知れない。自己満足かも知れない。それが幸せだと言い切る事はできないけど……駄目かな?」
「駄目じゃない!」
小林はニカッ、と笑った。
心なしか頬が薄っすら紅潮している。
「駄目じゃ、ないよ。嬉しい、凄く。休みの日に家で一緒にご飯食べるって…何だか家族みたいだ」
「家族……か」
ぎゅっと目を細め慈しむような表情に、谷口の胸がじわりと温かくなる。
「ねぇ小林くん、君が良ければ下の名前でよんでも構わないかな?」
「えっ」
小林は一瞬驚いて目を見開いたが、直ぐにクシャリと破顔した。
「うん……うん!分かった!俺も、名前でよんでいい?」
「勿論」
「洋平さん、」
「一成くん、これからも宜しくね」
「こちらこそ!」
――明日、一成くんの食器と、新しい弁当箱を買いにいこう
谷口は微笑みながらそんな事を考えていた。
おわり
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