ゾンビは何味で食べるのがベストか?

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 雨が続いていて外でデートという感じではない。  県の洪水注意報のアラートが鳴る。  幸いこの辺は川も流れていないし、周りより海抜が高いので危険地区には入っていない。  今日は宇条さんの家で映画を見ることになった。  一応、手を出されない事は分かっているけど、い、ち、お、う、念入りにシャワーを浴びて着替えもしておく。  ああ、でも、ゾンビ映画を一緒に観ようと言われたらどうしよう。  条件反射でおかしな事をしてしまいそうだ。  慎重に、映画の好みを何も知らない体で過ごさなければ。  拍子抜けした。  宇条さんが用意していたのは、普通の名作アクション映画だった。 「宇条さんって普段はどんな映画見るんですか?」  ゾンビ映画ですか? 「ああ、何でも観るよ。コメディも感動モノも、パニック系も」  それは全部ゾンビで構成されているのを私は知っているけどね。 「リコちゃんは?」 「SFとかファンタジーとか、あとは歴史ものとかですかね」  生憎、ゾンビ系ではないけれど。 「あんまり現実に近い内容だと、色々考えちゃって集中できなくて」 「そうだよね、非現実的なのが映像化されてるのが楽しいよね」  ゾンビ映画みたいに? 「今度映画館に行って観ようか?何か面白そうなのやっていたかな」  それはゾンビ映画?  次々と湧き出る突っ込みをいなして、ニッコリと笑おう。  パソコンを立ち上げて映画情報を調べ始める宇条さんに身を寄せて一緒に画面を覗きこむ。  むむ、この距離感、彼氏彼女らしいではないか! 「夏だから、ホラーが多めですねー」  コツンと頭を寄せると抱き寄せられる。 「リコちゃんはホラー見る?」  つ、ついにゾンビ・カミングアウトかと、わくわくする。 「映画館では敢えて見ようとは思わないですね。ホラーってツッコミ入れながら家で見る方が面白くないですか?」  ねえ、ゾンビ映画とか。 「でも、一人で見るのは怖いかなぁ」  さー、いつでもゾンビをカミングアウトしてきていいんですよ、宇条さん! 「確かにねー」  結局、宇条さんは私にゾンビ映画フリークであることは言わなかった。  何となく隠し事をされたようで切ない。  やさぐれた気持ちを癒して欲しいよ、宇条さん。
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