洞穴

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 大夢(ひろむ)は小学校を終えて家に帰っていた。今日は朝から快晴で、雨が降る気配はない。だが、雷が聞こえる。夕立が起きそうな気配がする。大夢は少し焦っていた。夕立の事を考えていなくて、傘を持ってこなかった。早く帰らないと。  だが、しばらく歩いていると、雨が落ちてきた。雨が落ちて、徐々にアスファルトの色が変わっていく。 「雨・・・」  徐々に雨は強くなっていく。だが、家まではまだまだある。大夢は走り出した。 「くそっ、こんなに突然雨が降るなんて」  だが、雨は激しくなり、目を開けるのがつらくなる。どこかで雨宿りをしなければ。止んだら、再び家に向かおう。  大夢は辺りを探した。すると、洞穴を見つけた。その洞穴は、入ってはならないと聞いていた。だが、雨宿りのために行かなければ。少し入っても問題ないだろう。 「ここで雨宿りをしよう」  大夢は洞穴に入った。洞穴はとても静かで、暗い。でも、どうしてこんな所にあるんだろう。大夢には、その理由がわからなかった。 「はぁ・・・。早く止まないかな?」  大夢は洞穴の中を見た。その先に続いているが、先が見えない。その先は何があるんだろう。気になる。だけど、奥に行ってはならない。帰れなくなるかもしれない。今は家に帰る事だけに集中しなければ。 「あれっ!?」  と、大夢は目の前にある緑色の石が気になった。この石は何だろう。こんな緑色の石なんて、見た事がない。持っていたら、何かいい事がありそうだ。 「この石、何だろう」  大夢はその石を手に取った。そして、その石をポケットに隠した。自分だけの秘密にしよう。 「きれい。持って帰ろう」  大夢は外を見た。雨が止んでいる。ようやく帰れる。早く家に帰ろう。母が心配しているだろう。 「あっ、雨が止んでる! よかった」  大夢は洞穴を出て、家に帰り始めた。その時大夢は気づいていなかった。その石を、緑の龍が見ているのを。そしてこの後、とんでもない事になってしまうのを。  10分後、大夢は家に帰ってきた。家は2階建ての一軒家だ。家には母がいるはずだ。心配しているだろうか? 「ただいまー」 「おかえりー」  大夢は家に入った。いつものように母は迎えてくれた。何とも思っていないようだ。大夢はそのまま、2階の自分の部屋に向かった。今日はとても疲れた。いつも通りに帰れると思ったら、夕立で雨宿りをしてしまい、帰りが遅くなってしまった。夕食まで、しっかりと休もう。  大夢はベッドに横になった。そして、ポケットから石を取り出した。何の石だろう。想像ができない。 「うーん・・・。これ、マジ何だろう。わからないなー」  その時、石から何かが見えた。それは、緑の龍だ。この中には、緑の龍の魂が入っているんだろうか? もしそうだとすれば、すごいな。 「うわっ・・・。龍?」  それを見た大夢は声を上げてしまった。だが、すぐに元の表情に戻った。  大夢は少し眠ってしまった。今日は色々疲れた。明日も学校だ。しっかりと疲れを取らないと。そのまま、大夢は寝入ってしまった。 「大夢、ごはんよー」  大夢は母の声で目を覚ました。もう夕方なのか。外を見ると、まだ明るい。だが、母が言っているのだから、もう夕方なんだ。 「はーい」  大夢は部屋を飛び出し、1階に向かった。  夜10時、そろそろ寝る時間だ。宿題はもうした。明日の準備はできた。早く寝ないと。 「はぁ、今日も疲れたなー」  大夢は外を見た。今日は色々大変だったけど、明日は大丈夫だろう。 「寝よっ」  大夢はベッドに横になった。疲れているのか、すぐに大夢は寝入った。  だが、今日の様子はどこかおかしい。今さっきまで冷房をかけていたのに、あっという間に暑くなった。いや、体が熱いんだろうか? よくわからない。 「うーん・・・。うーん・・・」  大夢はうなされていた。どうしてなのかわからない。夕立で雨に打たれたせいだろうか? いや、ほとんど濡れていないから、そんな事はない。 「な、何?」  目を開けた大夢は驚いた。パジャマを破って緑の尻尾が伸びていく。龍の尻尾のようだ。えっ、あの龍? 「り、龍?」  次に大夢は両手を見た。手も緑の龍になっていく。まさか、あの石を拾ってしまったから、こうなってしまったんだろうか? だから、あの洞穴に入るなと言われているんだろうか? 「そ、そんな・・・」  そして、体がぐんぐん伸びていき、パジャマの上着と下着が離れていく。その間からは、龍の胴体が見える。自分がどんどん龍になっていく。助けて、誰か助けて。 「いやーーーーー!」  大夢は思わず声を上げてしまった。早く母に来てほしい。どうしてこうなったのか、教えてほしい。そして、その呪いを解くには、どうすればいいか教えてほしい。  程なくして、母がやって来た。大夢の叫び声に反応したようだ。 「どうしたの、大夢!」  だが、母は辺りを見渡した。見えているはずなのに、どうしてだろう。まるで見えていないような様子だ。 「大夢? あれ、どこにいるの?」 「まさか、僕が見えないの?」  だが、その声も届かない。目の前にいるのに。どうやら、大夢の声ではなく、部屋の物音に気付いて、部屋にやって来たようだ。大夢はいつの間にか、パジャマを脱いで、緑の龍になっていた。大夢はそのまま、自分の部屋に立ち、茫然としていた。 「そんな・・・」  それ以後、大夢の姿を見た者はいないという。
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