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「ふっふふぅ~ん……なあ~んか、自分も被害者って面だなぁ~」
ある日の掃除中、あまり金魚たちを見るにしのびない気持ちが勝り、下を向き黙々とひたすら作業をすることで誤魔化している俺は、聞いたことのない声の主に不意に声をかけられ顔を上げた。
見ると一匹の若い雄の金魚が、大きな木の下にある陰になっている部分で、優雅に腰掛けじっと見ている。
いつも見ている金魚に比べ、濡れてさらに黄金に輝く髪と黄金色の瞳を持つ美しい顔。
内からの黄金の輝きが他の金魚たちより抜きん出ている。
「おまえ、息が……」
「改良され続けた末裔には、俺みたいに陸で呼吸できたりするのが出てくるんだよ。ただ、歩けないから仕方なく水の中にいるだけだ」
パシャリとその大きく振り下ろした美しい尾で水を打ち、ゆらゆらと水の中でヒレを動かした。
「なぁ~んか、不満だらけのつまんなそうな顔。嫌なら何故この国を出ないんだ?俺達にはない立派に立てる足があるだろ?」
「はっ!おまえなんかに、何がわかるってんだ?」
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