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お風呂あがり、テーブルを見た。
例の小さなチラシ1枚。
そして、呪い玉の文字。
そうだ。
佐藤さんが居なくなれば。
ーー憎い。
本当に憎い。
普通の薬局の時間であれば、閉まっている22時。
電話してみた。
怪しければ、すぐに切ればいいのだ。
それに繋がる時間ではない、と思う。
しかし、不思議に思ったのは、私の住んでいる街の市外局番。
小さな頃から住んでいたけれど、こんな薬局なんて、
見たことも聞いたこともない。
3回目のコール。
「はい、何でも薬局です」
男性の声で電話が繋がった。
まさか、ホントに繋がるとは。
「あ、あのっ!えっと、チラシを見たんですけれども。の、呪い玉の…」
緊張して、上手く話せないが、電話の向こうの男性は「あぁ、呪い玉ですね、ありますよ」と明るく話す。
まるで、"呪い"なんて関係ないような話し方だ。
「良かったら明日、薬局来られますか?呪い玉の薬、一粒1万5千円です。よく効きますよ」
一粒で1万5千円とは高い、と思ったけれど、よく効くという言葉に、それなら安いものだと気持ちが切り替わる。
「あの、場所はどこでしょうか?」
「場所は、あなたのアパートの向かい側、そこの家ですよ。
ぞくりとした。
何故、名前も話していないのに、私のアパートを知っているのか…そして、こんなに近くに薬局が偶然にあるのか。
男性が言っている家というのは、広い庭をぐるりと高い塀が囲む日本家屋の大きな屋敷だった。
そこが、薬局だなんて、誰も思わない。
「ふふふ、もしかして、何故あなたを知っているのか怖がっていますか?ワタクシ、恨みを持つ人間を探すのが得意でしてね、怖がらないでください。何か危害を加えようなど考えておりませんから。恨みを持っている方を助けたいだけなので」
「ホントに、あの、本当に、その、呪い玉という薬は効くんでしょうか?」
「効きますよ。恨んでいる気持ちが大きければ大きい程、相手に大きなダメージを与えることができます。
詳しくはご購入頂く時にまたお話したいと思いますが、如何されますか?」
少し躊躇した。
が、「買います」の言葉が喉から勝手に出た。
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