プラトニックラブを求めて

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プラトニックラブを求めて

「ふう、今日も疲れたあ」 仕事を終え、オフィスを後にする。ふと周囲を見ると、電灯で輝いているビルが他にも多くあった。これらは夜の闇に染まった都会を明るく、さらに上品に照らしてくれる。どこか高層ビルか何かから見れば、さぞ絶景だろう。大学生として上京する前、そして大学生活中はこれらの夜景に強い幻想を抱くようになっていた。だが社会人になり、毎日夜遅くに帰り、その絶景は人々が必死に働くことによって成り立っていると考えるようになってからは、その幻想はすっかりと消えた。そして単なる日常の風景としか思えなくなったのである。 「もう八時かあ」 私はアイコ。都内で働く公務員だ。都内でキラキラ輝く女の子、と言いたいところだが、現実は泥臭い日々の連続だ。外部からのお叱りには取り繕って申し訳ございませんと対応し、同僚同士の架け橋、いや板挟み状態になっても耐え、上司からの嫌味にも心を無にして頷く。土曜日に休日出勤したおかげだろうか、私の抱えていた仕事はようやく落ち着いたが、月曜日からまた新しい仕事が始まる。そのことを考えると、少し憂鬱だった。一応それなりにいい大学を出て、公務員試験も突破したはずなのだが、その先がこんな日々だと昔の私が知っていたら、どんな顔をするだろう。もしかしたら公務員になること自体諦めてもおかしくないかもしれない。 さらに私を悩ませるのは、今度の月曜日に新人が配属されることだ。新たな出会いが楽しみな一方、苦労も少なからずあるかもしれないという気分になっていた。仕事を教えないといけない。先輩として立派な背中を見せなければいけない。こういったある種の強迫観念が私を攻撃していた。あるいは、私よりもずっと優秀な子で、そのせいで周囲から後ろ指を指されたらどうしよう。そんなネガティブな気持ちにもなっていた。ただ何やかんやで新しい風が職場に吹き込むのはいいものだ。もっとも、私もまだまだ若手ではあるが。
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