21 触れる五分と触れられない三時間

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 本日三回目の治療の時間が訪れた。  夕日でレインの部屋の中がオレンジに染まり、私たちは二人だけで向かい合っている。レインが二人で行いたいと言ったからだ。 「それじゃあ、よろしくお願いします」  なぜか緊張して私は小さな声で言った。 「こちらこそよろしくね」  そう言うとレインは穏やかな瞳を私に向けて、手を差し出した。オレンジ色の光が部屋の中の小さな塵をキラキラ輝かせる中で私は彼の手を取る。  そしてそっと引き寄せられる。ダンスのためにホールドを組むだけだ。  でも、こうして私たちだけの部屋で、静かな時の中で、向かい合って引き寄せられるとそれだけではない気持ちになってしまう。  朝と昼と同じように、私の肩にレインの手が、レインの腕に私の手が。それから右腹に熱を感じる。ペアダンスの姿勢を取っているだけだ。  でも、私はレインが好きで、彼も私を好きだと言う。やっぱり恥ずかしくて足元を見つめる。 「じゃあ今から五分だ」  近くのデスクに置いた懐中時計を見ているのだろう、レインは言った。 「じっとしているの……?」 「ああどうせならダンスの練習を兼ねればよかったね。この部屋じゃあ踊れない」  少しだけ視線をずらす。レインの部屋は片付いてはいるけれど物が多い。お祖父様の部屋を思い出すこの部屋は魔法に関連する物があちこち並べられている。この部屋でダンスの練習はとても無理だ。  そうやって部屋を見渡すことで気をそらしてみる。だって、こんな。動かずじっとしているだなんて抱き合っているようなものだ。 「セレン」  低くて優しい声が私の耳をくすぐる。
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