ゲーム世界の謎肉

2/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「味付けに飽きたら、調味料もあるよ」  勇者は、小瓶に入った調味料を指差した。この世界では塩が貴重だが、香辛料の類は王都では手に入り易く、材料の殆どが香辛料の調味料もある。固めの肉を食べている最中だったので、勇者の話に頷いて返事とした。そして、今度は笹身に似た肉を食べる。笹身よりは味が濃く、それでいて噛めばホロホロと崩れる肉。これは、かなりの好みかも知れない。 「昨日の怪我のこともあるし、しっかり食べてね」  勇者と私は、宿に来る途中の道で襲撃を受けた。そして、その際に私は攻撃を受けて、かなり酷いことになっていたらしい。最も、その怪我は治療済みで、攻撃を受けた場所に痛みもない。それでも、勇者は心配をしてくれた様だ。 「そんなこと言うと、旨い肉だけ選んで食い尽くすぞ?」  今度は、やたらと黒い肉を試す。表面は弾力があるくせに、歯を沈ませた途端に中の柔らかい何かが口に広がった。これは、何と言うか肉なのか謎だな。  そうして様々な種類の肉を食べ、気付いた時には肉は最後の一つになっていた。しかし、その肉はオレンジ色をしていて、何やらギラギラと光っている。勇者はこの料理に使ったのは全て肉だと言っていたが、何の肉か想像も付かない。 「なあ、この残ったやつって何の肉?」  その問いに、勇者は残ったオレンジ色の物体を眺めた。そして、フォークで刺してこちらに差し出してくる。 「いや、何の肉だよ」  和やかな笑みを浮かべながら、謎肉を食べさせようとしてくる勇者。何でそんなに謎肉を押し付けたがるんだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!