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「はい、そうなんです。
今回の悩みは、薬で解決するのは難しいですよね!」
僕がおそるおそる話をすると、老紳士は思いもかけないことを話し始めた。
「薬のことだけれど…
私が今まで弓弦君に渡した薬は、実は特別な薬ではないんだよ!」
この老紳士の言葉が僕には理解できなかった。
「私が弓弦君に渡した薬は、そこら辺の薬屋さんで売っている、ただのビタミン剤だよ!」
老紳士の言葉に、僕は唖然として言葉が出なかった。
さらに老紳士は、
「高校受験、大学受験、就職面接を勝ち抜いたのは、弓弦君がもともと持っていた実力なんだよ!
弓弦君は実は力があるのに、いざという時にその力を十分に発揮できていなかっただけなんだよ!
結婚のことも、もっと自信をもって臨めば、きっと弓弦君に合った女性が見つかると思うよ!」
と優しい笑顔で言葉をかけてくれた。
「そうだったんですね!
僕は薬の効果だとばかり思っていました。」
僕が正直に思いを話すと老紳士が、
「願いが叶う薬と言って渡したことについては、騙したようで申し訳ないと思っているよ!
弓弦君、君はもっと自分を信じてまっすぐに自分自身に向き合えば大丈夫…
きっといいことあるよ!」
と笑顔で僕にそう言葉をかけて、ベンチを立って去っていった。
僕は老紳士の後姿を老紳士が見えなくなるまで、ずっと見つめていた。
夕方になって辺りが暗くなってきた頃、僕は朝霧自然公園を出てバスで自宅に帰った。
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