20 戴冠記念式典

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 アークの話に、魔法使いの話題が出ると、会場は急にざわざわと落ち着きのないものになった。 「さらに!」  会場のざわめきを制するように、アークは声を張り上げた。 「この春の干ばつの際に、地方に恵の雨をもたらしたのも、同じ魔法使いである。土地に作物が取れなければ、人は生きてゆけぬ。この雨は、アナトリア王国国民の命を救った雨である」  アークはそう言うと、一呼吸置いて、会場を見渡した。 「皆も、希代の魔法使い『ペリクレスの魔女』のことは知っているだろう。ペリクレス家の末の娘、アメリア・ペリクレスは、この度、グラシア教会により『精霊の御使』として、承認された」  その言葉に、会場の多くが騒めいた。 「彼女の巨大な力は、まさしく精霊の顕在であり、森羅万象を統べる神の御業を体現するものである。これにより、彼女は、教会の要請に基づき、諸君の愛する領民へ恵を実践することになる。しかと、心得よ」 と、言うと、アークは手を上に上げて、合図をした。  すると、会場の入り口からサジュームにエスコートされたレイナが、入場してきた。  背が高く、手足のすらりと長いレイナは、シンプルなドレスがよく似合っていた。
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