私と君ときらめく雨

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 今日は生憎の空模様。私は、サーサーと降り注ぐ雨を学校の屋根の下から見ていた。 「あー!傘忘れてきたんだけど……」  私の隣で君が叫ぶ。 「俺、雨って服が濡れるから嫌なんだよなぁ……なぁ、お前もそう思わん?」  君にそう尋ねられた私は、クスリと笑って首を横に振った。 「雨、私は好きだよ」  だって昔、君が「雨が好きだ」って言ってたから。 「かっこいいレインコートも着れるし、かっこいい傘もさせるし、雨の時にしか楽しめないこともあるでしょ?」  昔の君の受け売りを、今の君に伝える私。でも、君は不思議そうに首を傾げるだけだった。 「そうか?……てか、かっこいい?お前、かっこいいもの好きだったっけ?」  ふふっ、やっぱり覚えてないみたい。 「好きな人の受け売りだよ」 「すっ、好きな人!?だ、誰誰誰!?」 「ふふっ、まだ内緒!」  私は明るく笑うと、雨の中に飛び出した。 「お、おい!濡れちまうぞ!?」 「あはは!だいじょーぶ!ほら、君も!」  私は君の手を引いて、雨の中を走り出した。 「このまま走って、一番乗りで虹を見よう!昔みたいにさ!」 「に、虹ぃ?……たく、しょうがねーな」  仕方なさそうに笑う君が可愛くて、思わず笑みがこぼれる。  今日も、明日も、その先も……こうして、手を繋いで走れますように。一番乗りの虹を、一緒に見られますように。そう願いながら、私はきらめく雨の中を走った。  きっと虹は、すぐそこだ。
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