限りある命

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治療期間1年、療養期間1年、計2年をアメリカで過ごした。すっかり体調も良くなって、病気もある程度治った。日本に帰国したあとは12錠から3錠に減った薬を朝と夜に飲むだけだ。入院中はずっと勉強していたので英語も話せるようになったし、学力もついた。元々物覚えはいい方だった。そのおかげか日本で最も有名な国立大学に首席合格が決まり、同年代とは1年遅れで入学することになった。 「鈴音くん、おはよー。」 「黒羽、おはよう」 「おはよう、2人とも。」 二人は入学当初から仲良くしている、真緒と怜だ。二人は幼馴染で真緒は栗色の瞳とふわふわした柔らかそうな髪のかわいい女の子だ。怜は黒髪に、灰色がかった瞳をしたクールなイケメンである。僕なんかと仲良くしてくれる優しい人達だ。二人と歩いているとよく「え、イケメン!!」とか「何あの子かわいい!小動物みたい〜」とか称賛する声が聞こえてくる。そして今日も多分そうなんだろうと思っていると、今日はいつもと違って何故か周りが騒がしい。ざわざわとしている空気に混ざって皆同じ名前をコソコソと呼ぶ声が聞こえてきた。 「高槻先輩よ!かっこいい〜」 「今日はいつも以上にガン飛ばしてんな」 「あんなに顔も良くて学年首席だなんて…」 「高槻ホールディングスの次期代表取締役だってよ」 様々な発言が飛び交う中、僕はへーそうなんだ、と呑気に真緒と怜とお話していた。 「ね、ねえ、ちょっと!鈴音くん!」 真緒が慌てたように僕を呼ぶから、話を聞く為にちょっと屈んで顔を近づけた。 「え?なに、真緒」 「何じゃなくて、あっ、」 真緒は顔を赤くしたと思ったら、今度は真っ青にして、僕の後ろあたりを目を見開いて見ていた。僕はどうしたの?と聞きながらゆっくりと振り返った。 「え?どうし、た、……ッ」 太陽の光を反射して金粉が舞うように煌めく銀髪、高く真っ直ぐな鼻筋に、艶のある薄い唇。骨ばった輪郭に筋肉質な首、185cmを優に超す背丈に見合った、スラリと伸びる手足。服の上からでもわかる胸筋。なんと言っても、銀色の繊細かつ長いまつ毛に囲まれたルビーのような赤い瞳。 思わず息を飲んだ。言葉にして称賛することすら烏滸がましいとさえ思った。佇むだけで足が竦むほどの存在感と重圧感に心服した。 「黒羽 鈴音(くろは りお)」 風格ある地を這うような低音で名前を呼ばれて、目の前の彼が怒っているということが手に取るようにわかった。 「はいッ…」 「お前、どういうつもりだ」 どういうつもりとは、どういう事なんだ。僕は何もしてないぞ。周りから「あいつ高槻を怒らせたのか?」とか「社会的におわったな」とかそんな声や雰囲気をひしひしと感じた。どうしても分からない僕はただ恐る恐る見つめ返すしかなかった。 「黒羽、高槻に何をしたんだ?」 怜が横から僕の肩に腕を回し、囁くように耳元で言った。すると目の前の彼は一段と峻厳な態度を示して僕の腕を掴み、引き寄せた。 「行くぞ」 「…っ、え、行くってどこに」
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