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エドワード黒太子の言葉に。
イギリス軍に捕らえられてからの、彼女に加えられた屈辱の日々が、ジャンヌ・ダルクの記憶のなかで鮮やかによみがえった。
オトコの兵士が見張りにたつ牢獄の塔のなかで、犯されそうになって必死に戦った。普通はそう言う事がないように、修道尼が見張る修道院に閉じ込められるのが普通だ。
乙女の誇りを守るために、男装で過ごしたことが。「異端の証の一つだ」と、宗教裁判で言い立てる枢機卿の声が耳にこだまする。
「彼は、フランスの枢機卿・・だった」、その同じフランスの枢機卿コンビに、召喚されて・・フランスの為に、イギリスの戦争に参加?
思い出した。
彼女が初めて謁見を許された王太子だった頃のシャルル七世。気弱な少年は、精神に異常をきたしていたシャルル六世の死後、不遇な立場にあった。
その彼のために、命がけで戦った。その甲斐あってついに戴冠式を行ったシャルル七世の姿を、どれほど誇らしく思った事だろう。
だが、彼の側近たちはジャンヌ・ダルクを危険なライバルととらえ、シャルル七世の耳に色々と吹き込んだ。
そのせいで、シャルル七世とジャンヌ・ダルクの間がしっくりと行かなくなり。シャルル七世も最後には、側近が仕組んだ罠にかかってイギリス軍に捕らえられた彼女を、冷たく見捨てた。
哀しかった。
宗教裁判で異端として死刑が言い渡された時、シャルル七世に見捨てられたとハッキリと自覚したのだ。
「シャルル七世を恨んでいないと言えばウソになる」、その言葉をつぶやいた瞬間。
ジャンヌ・ダルクの身体は、ランカスター家の城の前で白い灰になり・・風に飛び散って霧散した。
驚き慌てたヨーク軍が敗走する姿を、ランカスター家の城の城壁の上に立って見ていたエドワード黒太子の顔に、歓喜が輝く。
「見事だ、レディ・ジェーン・グレイ」
再び抱き寄せた愛しい恋人の唇に、濃厚な口づけを!
空の上からその顛末を見ていたアーサー王と魔術師マーリンが拍手喝采、大いに満足した。
「さすがは、レディ・ジェーン・グレイだ。エドワード黒太子が来世を誓った恋人の、生まれ変わりのオンナだからなぁ」
「愛の勝利じゃよ」
魔術師マーリンが決め台詞を口にする。
「人選は大事じゃなぁ」
「フランスのヴァロア王朝には、ブルボン家の狂気が流れこんでおるからな。時々、信じられんことをする王がおるのじゃ」
そこでアーサー王が、ポンを膝を打つと。(何かを思い付いたらしい)
「その手があったか」、大きな叫び声をあげた。
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