はじめてのデート

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思い悩んでいたその時、奥さんと思われる女性が追うようにして降りてきた。 ショートカットの小柄な可愛らしい女性で、彼女は大和君に気がつくと両手を口元に当てて、とても驚いた様子で声を上げる。 「えっ、大和君!?こんなところでどうしたの!?」 「千佳さん、お久しぶりです!お元気でしたか?」 「うん。めちゃくちゃ元気よ。この間、うちに遊びにきてくれた以来だよね!?」 「そうですね。翠ちゃんが生まれたばかりの時に……って、翠ちゃん、大きくなりましたよね!」 大和君は、私や祖母にだけでなく、誰に対しても明るくてフレンドリーに接する。 それは彼の性格を考えれば当然で、何ら不思議なことではないのに、まるで目の前にいるのが知らない人のように思えて、微かな寂しさを感じてしまう。 「先輩」に対しては、そんなふうに思わなかったのに、どうしてかな……。 完全に傍観者になりかけていたところに、奥さんの「千佳さん」が、私に向かってニコリと笑いかけてくれる。 そして、興味津々に目を輝かせながら大和君に問いかけた。 「もしかして……大和君の、新しい彼女さん?」 「ち、違いますよ!宏明さんには前に話した、お世話になっている芳恵さんのお孫さんで……!」 そこまで全力で否定しなくても良いのに、と思う。 確かに、私なんかが彼女だなんて、勘違いされたら困るのは分かるけれど……と。 悲観的な気持ちになりかけていたところに、先輩は大和君に向けて意味深にニヤリとほくそ笑み、私にぎりぎり聞こえるくらいの声量で、ぼそりと呟く。 「ああ、噂の……月ちゃんね……」
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