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みがわり、みがわり。
夏の終わり。
多くの小学生たちが共通して頭を悩ませる問題がある。そう、“夏休みの宿題が終わってない!”だ。
「どどどどどどど、ど、どうし、よ……」
僕もまた、そんな哀れな小学生の一人だった。中学受験をやる人にとっては忙しい六年生。そうだとしても、うちの学校では宿題を減らしてくれるなんて温情はない(僕は受験組ではないので、関係ないといえば関係ないのだが)。
最近では夏休みの宿題がない学校も出てきたくらいだというのに、僕のところと来たら自由研究、読書感想文、漢字ドリル、計算ドリル、夏休みの絵日記、社会科ドリルともうてんこもりなのである。
読書感想文は、本の“最初と最後”だけ読んで、裏のあとがきを半写しし、かつネットの感想を上手に引用してどうにか誤魔化した。自由研究は、姉に土下座して工作を作ってもらったのでそれを提出してお茶を濁すことにする。また、漢字ドリルと計算ドリルは答えを丸写しにし、絵日記もうそっぱちの記憶で埋めてどうにかすることがまあ可能だろう。
問題は、社会科ドリルである。
何がいやらしいってこのドリル、答えがついていない。答えを丸写しにするという裏技が使えない。
ネットで一つ一つ答えを調べて書くのもあまりにも面倒くさい。というか、量が多すぎてそれさえ厳しい。
と、いうことで。
「こうなったら……誰かに答えを写させてもらうしか、ない!」
「あんたね……」
決意して拳を突き上げた僕に、工作を肩代わりしてくれた姉は呆れたように言ったのだった。
「そうなる前に、自分でやっときゃよかったじゃん。友達とゲーム大会ばっかりしてるから駄目なんだよ。夏の終わりになって焦りだすって、それ毎年繰り返してない?」
「やかましい!カードゲームが僕を呼ぶんだから仕方ねえだろ!小学生大会も夏休みの期間だったし、デッキ練る時間もいるし!」
「で、初戦でぼろ負けしたと」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ」
ごもっともな意見ではあるが、頼むから傷口に塩を塗らないで欲しいと思う。
手札が事故って何もしないでターンエンドし、ワンキルされて終わった青春なんぞもう思い出したくないのだから。
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