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「ここが玄関か? でっけードアだな。鍵は開いてるみたいだ。行こう」
薄暗い廊下には古い絵画や西洋の鎧が飾られていて、より一層不気味さを醸し出している。さすがのヒグマとカラスも怖いらしく、物音ひとつしない空間で唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
「ねえ、やっぱり帰ろうよ」
「なっ、なんだよ、ソウサク。ビッ、ビビってんのか? せっかく来たんだから、面白い物の一つや二つ見つけないと、学校のやつらに、じっ、自慢できないだろ?」
本当は怖いはずなのに、ヒグマは強がって廊下の奥の扉を開ける。そこは吹き抜けの大きな広間になっていて、幾つもの大きな本棚に囲まれていた。僕たちは部屋の扉を閉め、キョロキョロと辺りを見渡す。
「何だここ? 図書館みてーだな。カラス、何か面白い物あるか?」
「古い本ばかりだね。日本の本もあるけど、世界中の本が集まっている感じ。英語以外の本もたくさんあるよ」
「お前分かるのか? すげーな」
本当に誰もいないと分かった二人の緊張感は溶け始め、いつものように話し始めている。二人を見ていた僕も少しずつ冷静さを取り戻し、代わりに疑問が浮かび上がってきた。
いくら何でも、不用心過ぎないか? 外の扉も、玄関も鍵はかかっていなかった。こんな不気味な屋敷に入る人なんていないだろうけど、何日も家を空けるなら鍵くらいかけていくはずだ。つまり……
背筋に冷たいものが走る。次の瞬間、部屋の扉が勢いよく開き、白衣の男が飛び込んできた。
「誰だ、お前たちは!」
「うわっ!?」
突然響いた叫び声に驚いて腰を抜かしてしまった。部屋に入って来た白衣の大男がゆっくり近づいてくる。ヒグマとカラスは悲鳴を上げながら逃げ出してしまった。
僕も逃げたいけど体が動かない。このままでは改造されてしまう。やっぱり来なければよかった。涙を浮かべながら震えていると、大男は目の前でしゃがみ、僕の顔を覗き込んできた。
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