プロローグ 童話からの来訪者

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プロローグ 童話からの来訪者

「ソウサク、今からお前の家の近くにある怪しい研究者の家へ行ってみようぜ。なあ、おい。聞いてるのか?」 「えっ? なんだ、ヒグマとカラスか。忙しいんだから、邪魔しないで」  そう、僕は忙しいんだ。幼稚園からの悪友である、単細胞で怪力しか能がないヒグマと、悪知恵の働くカラスにつき合っている暇はない。小学生アイドルで学校一の美少女、天使のように可愛いテンちゃんを目に焼き付けておかないと。そんな僕の目線を追った二人がケラケラ笑った。 「やめとけよ。お前みたいな全てが平均の凡人じゃつりあわないぜ」  そんなことは分かっている。でも、想像するだけなら自由だろ。 「放っておいてよ」 「いいから行くぞ」 「どこに……あっ」  無理やり腕を引っ張られ、教室の外へと連れ出された。カラスが僕のランドセルを人質……いや、物質(ものじち)にしているから逃げるわけにもいかない。 「分かったから、手を放してよ。それと、ランドセル返して」  観念した僕は小さなため息を漏らし、ランドセルを庇うように抱きかかえながら二人の後ろをついていく。暫くすると見覚えのある怪しい門の前に着いた。門の奥にある寂れた屋敷からは不気味な雰囲気が漂っている。 「もしかして、ここに入ろうとしてるの? ダメだよ、ここは不味いって。怪しい白衣のおじさんが子供を改造してる場所だって聞いたよ」 「大丈夫。その怪しいおっさんを最近見ないって母ちゃんが言ってたんだ。きっと、海外とか遠くに出かけているんだよ。ほら、こっちだ」  外壁を伝って屋敷の裏手側に回ると、古びた扉を見つけた。鍵はかかっていないらしく、ヒグマが押すと、ギギッと鈍い音をたてながら扉が開く。怖いもの見たさと言うやつだろうか? 入ってはいけないと頭では分かっていながら、気が付いたらヒグマたちと一緒に敷地内へ足を踏み入れていた。
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